私は民主主義の手続きを無視する安倍国葬儀に反対する
結論
岸田政権は閣議決定を取り消す閣議決定を行い、故安倍晋三国葬儀を故安倍晋三内閣・自由民主党合同葬儀とすべき。
理由
- 故安倍晋三国葬儀当日の弔意表明は国葬儀より合同葬儀等に近い
- 他の葬儀形式でも支障はなく、必ず国葬儀とすべき理由がない
- 特定の儀式を「国の儀式」に位置付ける民主的手続きを経ていない
- 閣議決定は取り消し可能
故安倍晋三国葬儀当日の弔意表明は国葬儀より合同葬儀等に近い
具体的には以下の通り。
項目 | 国葬*1 | 安倍国葬儀*2 | 吉田国葬儀*3 | 中曽根合同葬儀*4 | 三木合同葬儀*5 |
---|---|---|---|---|---|
根拠規範 | 国葬令 | なし*6 | なし*7 | なし ? | なし ? |
組織規範 | ? | 国の儀式*8*9 | 総理府設置法? | 内閣の行う儀式*10*11 | 総理府設置法? |
弔旗掲揚 | あり*12 | 未定*13 | あり*14 | あり*15 | あり*16 |
黙祷 | ? | 未定*17 | あり*18 | あり*19 | あり*20 |
半休 | あり*21、土曜日等*22 | 火曜日。なし | 火曜日。あり*23 | 土曜日*24 | 月曜日。なし*25 |
歌舞音曲自粛 | あり*26 | なし*27 | あり*28 | なし*29 | なし*30 |
公営競技の自粛 | ? | なし*31 | あり*32 | なし*33 | ? |
場所 | 日比谷公園等*34 | 日本武道館*35 | 日本武道館*36 | グランドプリンスホテル新高輪*37 | 日本武道館*38 |
予算額に占める国費の割合 | 100%*39 | 100%*40 | 100%*41 | 50%*42 | 100%*43 |
国葬当日の弔意のあり方については東郷平八郎国葬時に国葬令4条の解釈が検討された*44。検討結果は以降の国葬や終戦・新憲法施行以降の貞明皇后大喪儀*45に引き継がれ、吉田国葬儀においても前例が踏襲されたが*46、国会質疑*47を経て項目が見直され、以降直近の中曽根合同葬儀の閣議了解*48*49通知内容に至る。安倍国葬儀の弔意表明については、8/15決定政府答弁書や8/31会見*50や幹事会*51の時点では、吉田国葬儀ではなく中曽根合同葬儀等の弔意表明形式を踏襲しているように見受けられる*52*53。
この内容であれば葬儀形式を国葬儀とする理由が全く存在しない。式次や弔意表明の具体的内容で合同葬儀を踏襲するのであれば、当然葬儀形式も合同葬儀とすべきである。費用についても、三木合同葬儀の例に照らせば、国葬儀でなければ国が100%支出しないという訳ではない。そもそも、安倍国葬儀における国葬儀とは一体何なのか?私には理解できなかった。
他の葬儀形式でも支障はなく、必ず国葬儀とすべき理由がない
特定の儀式を「国の儀式」に位置付ける民主的手続きを経ていない
「国の儀式」と法的根拠について
特定の儀式について規定した法律がなくても、閣議決定を根拠として国の儀式として特定の儀式を行うことは、国の儀式を内閣が行うことは行政権の作用に含まれること、内閣府設置法4条3項33号に内閣府の所掌事務として国の儀式に関する事務に関することが明記されており、国葬儀を含む国の儀式を行うことが行政権の作用に含まれることが法律上明確となっていること等から、可能であるとする政府見解*61に、私は異論はない。但し後述のように、根拠規範が存在しない*62特定の儀式を国の儀式に位置付けることは、一定の民主的手続きを経ていることがわかる。
「国の儀式」とは
「国の儀式」とは憲法7条10号儀式と閣議決定により「国の儀式」として位置付けられた儀式を意味するものとして用いられてきているもの*63である。後者は安倍国葬儀と吉田国葬儀しかない*64。よって私は、内閣が閣議決定によりある儀式を国の儀式に位置づけることは、内閣が当該儀式を憲法7条10号儀式と同格の儀式であると解していると解する。
憲法7条10号儀式とは
日本国憲法
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
十 儀式を行ふこと。
第二十条
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
宮内庁法2条8号儀式は憲法7条10号儀式に含まれるものと含まれないものが存在する。うち、憲法7条10号儀式は、いずれも国の儀式である*65。宮内庁HP*66では憲法7条10号儀式に該当する儀式を「国事行為たる」という文言を用いて区別している。後述の通り、我が国は憲法施行後、主に憲法20条3項との兼ね合いで諸儀式を憲法7条10号儀式、宮内庁2条8項儀式、掌典職所掌儀式のいずれとするかを国会質疑を通じて慎重に検討してきた歴史がある。
国が特定の儀式を憲法7条10号儀式に位置付ける際に行った民主的手続きについて
性質 | 新年祝賀の儀 | 立太子の礼等 | 剣璽等承継の儀等 | 大喪の礼 | 退位礼正殿の儀 |
---|---|---|---|---|---|
根拠規範 | なし | なし | 皇室典範24条 | 皇室典範25条 | なし |
定例 or 臨時 | 定例 | 臨時 | 臨時 | 臨時 | 臨時 |
予算案審議 | あり | あり | 明仁…なし/徳仁…あり | なし | あり |
予見性 | あり | あり | 明仁…なし/徳仁…あり | なし | あり |
立太子の礼等
明仁殿下(当時)の立太子の礼等は憲法施行後初めて行われた憲法7条10号儀式である*67。根拠規範は存在しない*68。政府が事前に国会で憲法7条10号儀式として実施したい旨説明した*69後、諸儀式に関する予算を昭和27年度一般会計予算として説明し*70、可決成立*71*72するという民主的手続きを経た後、閣議決定*73を根拠に行われた。
天皇の退位等に関する皇室典範特例法
第五条 第二条の規定による皇位の継承に伴い皇嗣となった皇族に関しては、皇室典範に定める事項については、皇太子の例による。
秋篠宮皇嗣殿下の立皇嗣の礼を憲法7条10号儀式と位置付けた*74のは、憲政史上2度行われた立太子の礼に倣ったものと思われる。
新年祝賀の儀
前述と異なり、新年祝賀の儀を憲法7条10号儀式に位置付ける閣議決定*75以前に同儀式を同条同号儀式とする旨の国会質疑を私は見つけられなかった。既に成立した予算の範囲内で行う儀式の憲法上の位置づけを閣議決定によって変更した形である。
閣議決定以降もほぼ毎年新年祝賀の儀を含む予算案が可決成立しており、国会として新年祝賀の儀を憲法7条10号儀式に位置付けることは毎年追認している。新年祝賀の儀を含む憲法7条10号儀式について、どの儀式が憲法7条10号儀式にあたるかは内閣が判断し閣議決定するという政府答弁*76も存在する。
剣璽等承継の儀等
明仁陛下即位以前、大嘗祭*77に関しては憲法20条3号に反し憲法7条10号儀式としては行えないという政府答弁は存在する*78*79。他方、剣璽渡御の儀等の憲法上の位置づけに関する国会質疑はにあったが、政府は名言を避けた*80*81。儀式の執行後、政府はひとまず政教分離の憲法違反に当たらず*82、剣璽等承継の儀等は即位の礼の一環として行った*83と答弁した。前述の2儀式と異なり根拠規範が存在するという政府見解である。
大喪の礼
剣璽等承継の儀等と異なり、明文の根拠規範が存在する。なお、根拠規範が存在する憲法7条10号儀式については、対象者の明文規定も存在する。香淳皇后大喪儀は国葬でも国の儀式たる国葬儀でもなく、皇室の行事として行われた*84。
退位礼正殿の儀
天皇の退位等に関する皇室典範特例法施行令
第一条 天皇の退位等に関する皇室典範特例法(以下「法」という。)第二条の規定による天皇の退位に際しては、退位の礼を行う。
皇室令付属法令にも存在せず、旧憲法においても否定的であった特定の儀式を、閣議決定によって国の儀式に指定するために必要な民主的手続きの参考例として、退位礼正殿の儀が挙げられる。
上皇退位以前の直近の譲位は大政奉還以前の光格天皇*85まで遡る*86。伊藤博文は著書で譲位に否定的な意見を述べた*87。明治憲法・旧皇室典範制に譲位は規定されず、一度も改正されなかった。敗戦直後の改正皇室典範を議論する帝国会議でも譲位に否定的な政府答弁が存在する*88。結局新皇室典範にも譲位は規定されなかった。譲位に伴う儀式の想定もない。
時は流れ明仁陛下のおことば*89が公開された。国会で議論が行われ*90*91、皇室典範特例法*92が成立。この時、退位礼正殿の儀は根拠規範として特例法に明記されることはなかった。特例法施行令に「退位の礼」の規定は設けるも、それが憲法7条10号儀式とは規定しなかった。退位の礼として退位礼正殿の儀を憲法7条10号儀式とするのは、お代替わり全般の国の儀式の方針を定める閣議決定*93まで待つこととなる。決定後、一般会計予算が取りまとめられ*94、国会質疑が行われ*95、予算案が可決成立し*96、方針決定から約1年後に退位礼正殿の儀が憲法7条10号儀式であることが閣議決定*97された。なお、具体的な儀式の内容は光格天皇のものとは異なる*98。
国葬令は民主的手続き*99によって失効した*100。民主的手続きによって否定された特定の儀式を国の儀式として閣議決定するまでに至る民主的手続きにおいて、過去のどの政権よりも丁寧な民主的手続きを経たのは、他ならぬ安倍政権である。
安倍国葬儀と他の「国の儀式」の民主的手続きの比較
上述のように、根拠規範が存在しない儀式を、国会質疑を経ることなく閣議決定により国の儀式と位置付けたのは新年祝賀の儀と吉田国葬儀のみである。その他については、事前に国会質疑が存在するか、根拠規範が存在するもののみである。
内閣法制局が安倍国葬儀の法的根拠について内閣官房及び内閣府に対し意見はないとした*101のは、前述の通り、旧憲法においても否定的に扱われた我が国の長い歴史の中で行われた伝統的な数々の儀式について、今後においても復活させ、国の儀式に指定可能とする余地を残すものであると私は考える。安倍国葬儀に根拠規範は存在せず*102、国会閉会中に閣議決定が行われた。この余地を恣意的に利用し、民主的手続きを経ずに特定の儀式を国の儀式として閣議決定するのは、我が国の憲政史に照らし、不適切である。
閣議決定は取り消し可能
全国民に10万円が給付された特別定額給付金*103は、令和2年4月7日の閣議決定*104を同20日に変更する*105という手続きが執られた。安倍国葬儀の根拠となる閣議決定も当然変更可能である。私は今すぐ安倍氏の葬儀を合同葬儀とする閣議決定を行うべきと考える。
*1:大正15年10月21日勅令第324号に規定する国葬をいう。
*6:内閣参質209第10号二について
*7:第58回国会 衆議院 決算委員会 第15号 昭和43年5月9日
*8:内閣府設置法4条3項33号に規定する「国の儀式」をいう。
*9:内閣参質209第9号一の4について
*10:内閣府設置法4条3項33号に規定する「内閣の行う儀式」をいう。
*11:内閣参質209第9号一の5について
*12:故元帥海軍大将侯爵東郷平八郎国葬記録 一・(昭和九年五月三十日没)第一編 第三章 第一節 第一 三 官庁ノ弔旗掲揚
*13:2022/8/15時点。内閣衆質209第30号一から六までについて
*14:故吉田茂国葬儀当日における弔意表明について(昭和42年10月25日閣議了解) (1)
*15:「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀の当日における弔意表明について(令和2年10月2日閣議了解)※文書名でGoogle画像検索すれば出る
*16:「故三木武夫」衆議院・内閣合同葬儀の当日における弔意表明について(昭和63年11月29日閣議了解) 1
*17:2022/8/15時点。内閣衆質209第31号一から五までについて
*18:故吉田茂国葬儀当日における弔意表明について(昭和42年10月25日閣議了解) (2)
*19:「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀の当日における弔意表明について(令和2年10月2日閣議了解)
*20:「故三木武夫」衆議院・内閣合同葬儀の当日における弔意表明について(昭和63年11月29日閣議了解) 2
*21:故元帥海軍大将侯爵東郷平八郎国葬記録 一・(昭和九年五月三十日没)第一編 第三章 第一節 第一 二 廃朝当日ハ休暇ナルヤ
*22:山本五十六の事例。元帥海軍大将山本五十六薨去ニ付特ニ国葬ヲ賜フ旨仰出サル
*23:故吉田茂国葬儀当日における弔意表明について(昭和42年10月25日閣議了解) (3)
*24:萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和2年10月16日)萩生田大臣(当時)「児童生徒や学生、直接の対象として想定しているものではありません。ご指摘のとおり、土曜日なので、教育委員会の案内は、あえて、分かれたのはそういうことでございまして。何か間違ったメッセージになってですね、休みの日にわざわざ職員の皆さんが出てきて、弔旗を掲げたり、間違ってもその児童生徒が学校へ出てきてですね、黙とうするなんてことは想定をしておりませんし望んでないことなので、そのことはできるだけ、間違わないように分かりやすく伝えたつもりでおります。」
*25:「故三木武夫」衆議院・内閣合同葬儀の当日における弔意表明について(昭和63年11月29日閣議了解) に当該記述なし
*26:故元帥海軍大将侯爵東郷平八郎国葬記録 一・(昭和九年五月三十日没)第一編 第三章 第一節 第二 歌舞音曲停止
*27:2022/8/15時点。内閣衆質209第33号一から九までについて
*28:故吉田茂国葬儀当日における弔意表明について(昭和42年10月25日閣議了解) (4)
*29:「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀の当日における弔意表明について(令和2年10月2日閣議了解)に当該記述なし
*30:「故三木武夫」衆議院・内閣合同葬儀の当日における弔意表明について(昭和63年11月29日閣議了解) に当該記述なし
*31:2022/8/15時点。内閣参質209第9号二の1について
*35:故安倍晋三の葬儀の執行について(令和4年7月22日閣議決定) 3 川内 博史ツイート(2022/7/26)
*36:故吉田茂の葬儀の執行について(昭和42年10月23日閣議決定) 3
*37:故中曽根康弘の葬儀の執行について(令和2年1月10日閣議決定)産経新聞2020/10/17
*38:故三木武夫の葬儀の執行について(昭和63年11月18日閣議決定) 2
*39:元帥海軍大将山本五十六葬儀書類 一・昭和十八年 予備金支出 国葬費第二予備金ヨリ支出ノ件
*40:故安倍晋三の葬儀の執行について(令和4年7月22日閣議決定) 4
*41:故吉田茂の葬儀の執行について(昭和42年10月23日閣議決定)4
*42:内閣参質209第10号七について
*43:故三木武夫の葬儀の執行について(昭和63年11月18日閣議決定) 3
*44:故元帥海軍大将侯爵東郷平八郎国葬記録 一・(昭和九年五月三十日没)第一編 第三章 第二節 国民ノ服喪 第一 国民ノ服喪ノ態様等
*45:皇太后大喪儀挙行要綱(内閣官房)。宮内庁は「事実上の国葬」としている。当時の日本はGHQ占領下にあり国葬は出来なかった。憲法7条10号規定儀式ではないため、戦前の皇室喪儀令に倣い神道形式で行われた。
*46:貞明皇后大喪儀の斂葬当日弔意奉表について。弔旗掲揚、黙祷、半休、歌舞音曲自粛要請の記載あり。
*47:第56回国会 衆議院 逓信委員会 第3号 昭和42年11月9日等
*50:令和4年8月31日 岸田内閣総理大臣記者会見 1:12:55~
*51:第2回故安倍晋三国葬儀 葬儀実行幹事会(令和4年8月31日(水)開催)
*52:但し、弔意表明に関する閣議了解通知を出さないのは憲政史上初。8/31岸田総理記者会見によれば葬儀委員長決定として従来通りの弔旗掲揚と黙祷を各省庁に求めるとのこと。閣議了解通知の発出予定なしとの方針は8/26松野官房長官会見 9:14~を参照。
*53:故安倍晋三国葬儀の当日における弔意表明について(令和4年8月31日葬儀委員長決定)
*54:「故小渕恵三」内閣・自由民主党合同葬儀 余談だが葬儀当日に競馬開催実績あり。
*56:「故小渕恵三」内閣・自由民主党合同葬儀に参列する各国首脳らと会談
*58: @takaichi_sanae 2022/7/22
*59:秋篠宮ご夫妻 反対多数の「安倍元首相国葬」参列が有力視…専門家は「批判の矛先が向かう」と憂慮 最終更新日:2022/08/23 06:00 「天皇皇后両陛下は、大喪の礼などの例外を除き、葬儀には参列されない慣例となっており、昭和天皇は侍従長を勅使として遣わされていました。前例にならえば、皇嗣と皇嗣妃である秋篠宮ご夫妻が参列されることになるでしょう」
*61:内閣参質209第10号二について
*62:「根拠規範」等で検索されたい。なお最決昭和55年9月22日において、警察法2条1項「警察は…交通の取締…に当ることをもつてその責務とする。」が根拠規範であるとした例がある。本記事では可能な限り、根拠規範が存在しないとする政府見解の出典の付与を心掛けるが、出典を探しきれなかったものも掲載する。
*63:内閣参質209第24号一について
*64:内閣参質209第9号一の4について、一の9について
*65:内閣参質209第9号一の8の(1)について
*67:象徴天皇制に関する基礎的資料 憲法調査会最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会(平成15年2月6日及び3月6日の参考資料)
*68:第13回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第3号 昭和27年2月22日
*69:第10回国会 衆議院 予算委員会 第18号 昭和26年2月22日
*70:第13回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第2号 昭和27年2月21日
*71:第13回国会 衆議院 本会議 第15号 昭和27年2月27日
*72:第13回国会 参議院 本会議 第25号 昭和27年3月27日
*73:立太子の礼及び皇太子成年式挙行要綱について(昭和27年9月9日閣議決定)
*74:立皇嗣の礼を国の儀式として行うことについて(令和2年3月24日閣議決定)
*75:新年祝賀の儀に関する件について 昭和27年12月12日閣議決定
*76:第126回国会 参議院 内閣委員会 第4号 平成5年4月27日
*78:第87回国会 衆議院 内閣委員会 第7号 昭和54年4月17日
*79:第101回国会 衆議院 内閣委員会 第6号 昭和59年4月5日
*80:第87回国会 衆議院 内閣委員会 第6号 昭和54年4月13日
*81:第113回国会 衆議院 決算委員会 第10号 昭和63年11月8日
*82:第114回国会 参議院 本会議 第5号 平成元年2月15日
*83:第114回国会 衆議院 予算委員会 第3号 平成元年2月17日
*86:第193回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第1号 平成29年2月22日
*88:第91回帝国議会 衆議院 本会議 第6号 昭和21年12月5日
*93:天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴う国の儀式等の挙行に係る基本方針について(平成30年4月3日閣議決定)
*94:皇位継承式典関係(一般会計)予算額(案)平成30年12月皇位継承式典事務局
*95:第198回国会 参議院 予算委員会 第11号 平成31年3月18日、第198回国会 参議院 予算委員会 第8号 平成31年3月13日等
*97:退位礼正殿の儀を国の儀式として行うことについて(平成31年4月19日閣議決定)
*98:「天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴う式典準備委員会(第2回)」に宮内庁が作成,提出した資料
*99:昭和二十二年法律第七十二号(日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律)
*100:第40回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第7号 昭和37年2月26日
*101:内閣参質209第10号十一について
*102:内閣参質209第10号二について
*103:特別定額給付金(新型コロナウイルス感染症緊急経済対策関連)
*104:新型コロナウイルス感染症緊急経済対策〜国民の命と生活を守り抜き、経済再生へ(令和2年4月7日閣議決定)
*105:新型コロナウイルス感染症緊急経済対策~国民の命と生活を守り抜き、経済再生へ~(令和2年4月7日、令和2年4月20日変更)
NewsPicksやる時間減らした
小泉進次郎が「新聞10紙も読むの止めた」という記事にNPでコメント付けたかったけど、1000文字越えたのでここに貼る。これよくスマホで打ったな、俺…
小泉進次郎が今年から新聞を読むのをやめた理由(常井 健一) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)
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私の時点で2970picks. ネットメディアの中でもNewsPicksにリーチ出来るぐらいリテラシー高い人が、今更この記事をpickしてどうするの?と言う気分になりました…以前運営の方が「NewsPicksはコメントを全くしないROMの方が非常に多い」と仰っていましたが、それをとても感じました。同時に日本人の権力従属指数の高さも…今まで何となく思っていたことを、小泉進次郎(若くて有名な方なら誰でも良いです)に代弁してもらったことで、初めて自信を得る。とても日本人らしいと感じましたw
新聞社が弱ってくると「一次情報をどこから得るのか?」という問題に直面せざるを得ません。私は2016年の都知事選直前にNewsPicksのアカウントを取得しましたが、それは猪瀬PROという当事者が、当事者しか知り得ない一次情報を発していたからです。NewsPicksは今でこそ課金ユーザーが増えてオリジナルコンテンツが増えましたが、それはネットメディアでありながら、人に直接取材して、一次情報を引き出しているからです。つまり泥臭く足で稼いでる。人を引き付ける力は一次情報にあります。その意味では本記事も、小泉進次郎氏に直接インタビューを取った署名記事、つまり一次情報だからこそここまでPicksが伸びると分析しています。
しかし、ネットメディアが強くなりすぎると、今度は「著しく限定された母集団の一次情報しか入ってこない」という問題が出てきます。この、著しく限定された母集団という言葉は、私は二つあると考えます。
一つめ。ネットメディアが手に入れられる一次情報の偏り。新聞はボロカス叩かれていますが、めっちゃ稼いでいます。文化的活動(囲碁・将棋やスポーツなど)のスポンサーを全く降りない。だからこそ、全国各地に支部を持ってるし、記者も食わすことが出来る。ネットでコンテンツを売る企業としては、ソシャゲなど1ユーザー当たりの課金額が非常に高い企業はプロ野球のスポンサーも出来るようになりましたが、ネットメディアではまだ文化的活動のスポンサーを出来るほど稼げていない。なので、例えばNewsPicksが発信する一次情報は、予算の関係上、東京近辺で直接コンタクトが取れる人か、Skypeなどを使うことができるリテラシーのとても高い人に限られます。そこから漏れた情報は入ってこない。新聞がなくなったとき、ここから漏れた一次情報はどこから取るの?という問題が生じます。
二つ目はもっと大きい。個人の趣味・趣向の偏りです。テレビや新聞は受動的メディアなので、欲しくない情報でも手に入るのがある意味大きいですが、ネットはクリックなりタップしないと情報が手に入らない。つまり、現時点の自分が興味関心のある情報しか手に入らないのです。これはNewsPicksでも顕著です。NewsPicksユーザーの大半が、女性問題と差別問題に著しく鈍感な男性であることを強く意識する必要があります。BBCがブラックフェイスを報じた日本語記事は、現状私しかPickしていません。この二つは時代による価値観の変化が大きく、かつ付いて来れないと甚大な損失を産み出す概念なのに、経済メディアを読んでる人たちの興味関心が低い。ここに大きな危機感を感じます。
最初の問題とこの二つの問題をNewsPicksは非常に上手く忖度しています。日本人は権力従属指数が非常に高い。つまり、強い男性から発せられるメッセージしか受け取らない経営トップが、ネット時代になっても、世代が入れ替わっても減らないということです。人やメディアの新陳代謝が起こってもここは変わらないことに大きな課題があると感じます。女性問題と差別問題は、基本的に権力が低くて発信力のない人からしか聞こえてこない。ここを拾えるネットメディアが必要だし、そのメディアと接する時間を増やす必要があると感じます。
2016年夏にNewsPicksのアカウントを取得し、その年はめっちゃ使いましたが、2017年を振り返ると利用時間は著しく減りました。今は英語メディアと接する時間を増やそうとしています。私の語学力がとても低いので、英語メディアの情報全体の1割も理解できていませんが、それでも英語を勉強して、偏りを可能な限り潰した方が、NewsPicksにどっぷり浸かってしまうより何倍もマシに思えてなりません。2017年はSeth MeyersのLate night show, とくにA CLOSER LOOKをYoutubeでよく観ました。これはスゴいです。まず、英語字幕がほぼ完璧に出てくるし、出てくる英語は簡単なものしかないし、時事問題はおさえられるし、そして何より面白い!日本の投票率が著しく低いのは、A CLOSER LOOKのような、娯楽として完成度が高く、かつ分かりやすい時事問題番組がないからなのでは?と思えました。Charlottesville事件の頃からこの番組を観始めましたが、NewsPicksと違って女性問題と差別問題にとても敏感です。2018年も英語メディアと、そしてBuzzFeedやHuffPostの接触時間を意図的に増やしたいと思います。
AlphaGoの活躍でAIをビジネスに取り入れようとしているえらいひとたちへ
※私はAIの専門家ではありません。日本中のどこにでもいる、クソExcelを撒き散らすことしか脳がないクソリーマンです
※私の囲碁の腕前は幽玄の間で5~6級ぐらいです。ルールを覚えて最後まで打ち切れる程度です。
ここ数年、とくに去年AlphaGoがセドル先生に勝ってからというもの、世の中がAI、人工知能、機械学習ととにかくかしましい。ビジネスの世界でもオッサンが「これからはAIの時代(キリッ」とかやってる時代だ。俺が直接言われたわけではないが、幹部は社長から「AIを導入してナントカしろ!」と経営会議で厳命されたそうだ。俺は子会社のぺーぺーだから直接の被害はないが、言われた幹部は心底かわいそうだ。
もし自分が幹部にパワハラ気味に「オマエ、ナントカしろよ」と言われたらどうするのか*1。考えてみた。
そもそもAIって何ができるのか?
考えてみればすごい話だ。「ウチの会社、何となく無駄が多そう」「何となく自動化できる仕事が多そう」と考えているはずなのに、指示は「ITのトレンドを勉強して、自社に応用できることがあればレポートしろ。AIなどの最新事例も逃すなよ」じゃなくて「AIでナントカしろ」だもんな…「自社の業務の中にAIを使えそうな分野はありませんでした。これ以上調査するなら、予算を割いて専門家を連れてくるしかありません」という報告は、学術論文では十分有意義なことなのに、企業でこれをやると無能扱いされる意味が分からない。
『私は失敗したことがない。ただ、1万通りの、うまく行かない方法を見つけただけだ。』
既に広く知られていることだが、コンピュータのチェスはかなり昔にグランドマスターを破っている。しかし、コンピュータチェスは人工知能でも機械学習でもAIでもない。いや、当時はコンピュータチェスを人工知能と読んでいたかもしれないが、2016年にAlphaGoがセドル先生に勝ったときに、世の中で使われている「人工知能」や「機械学習」という単語の意味は変わったように思う。少なくとも2016年の囲碁と同じ技術でないことだけは確かだ。コンピュータ囲碁に使われてるような最新のすごい技術を使わなくても、チェスでは人間に勝てるのだ。
私はぺーぺーなのでクソExcel VBAコードをよく上司に書かされる。ウチの部署にはプロのプログラマがおらず、野良VBAerがそこそこいる。だから自動化はやればできるし、非効率な仕事はなくせると思っている。しかし、ウチの課長は自動化という果実がVBAによってもたらされたのか、それともAIや機械学習によってもたらされたものなのか、理解していない。上も上で似たような空気のように思える。本当にそんなレベルで「AIでナントカしろ」という指示を、よく出せたもんだなーって思う。「AIとは何かを、俺に分かりやすくプレゼンしろ」で留めとけよ…
誰が自社のビジネスをAIに教えるの?
囲碁5級でプログラミングもクソExcel VBAしか書けない俺にとっても、この本はスーパーエクセレントブックでありサイコーなエンターテイメントだった。初版2012年なので、初期の将棋電王戦が行われ、米長先生を倒して話題になった頃の話だ。
この本を読んで痛感したのは、「とにかく、囲碁をコンピュータに教えるのはものすごく難しい」ことと、「囲碁という1000年以上殆どルールが変わらなかったゲームに対して、すごい人数でメチャクチャ時間をかけて研究している」ことだ。とにかく参照される論文数が半端じゃない。一人では到底囲碁というゲームを解析しきれないことは、研究者なら誰でもわかってる。だからこそ、自分の研究成果を論文という形で公開して、他の人に託しているのだ。
この本では、チェスが人間のグランドマスターに勝って盛り上がっていた頃、それなら囲碁もと頑張ってはみたものの、失敗を大量に繰り返した苦労の歴史が読み取れる。「最強手を追求することを放棄して、勝つことを最重要視したら勝率がめっちゃ上がった」「モンテカルロ法を使ったら勝率がめっちゃ上がった」くらいまではネットでも拾えそうな情報だけど、2012年当時でも「モンテカルロ法を将棋に応用したらメチャ弱かった。アマチュア初段程度」とは驚いた。汎用的で万能なアルゴリズムは2012年にはまだない。ゲームが変われば、有効なアルゴリズムは変わる。結局「囲碁というゲームはこういうゲームだ。オマエはここでこう考えとけ」と命令しているのは人間なのだ。
個人的には、「なぜコンピュータはシチョウを逃げ出したがるのか」が書かれた部分がとても面白かった。2016年、セドル大先生が4局目の白78で奇跡的な手を放ったあと、AlphaGoは突然暴走した。取られている石を逃げ出して大損したり、手のない隅に手をつけて石をタダ取りされた。この本を読んで、間違いなくAlphaGoの開発者も、数多くのコンピュータ囲碁の(その多くは失敗の歴史である)論文を読んだのだと確信した。この本で解説されている、負けたときに無理気味に暴発する過去の囲碁プログラムたちと、AlphaGoがソックリなのだ。去年のAlphaGoの試合は、googleがちょっと本気出したらセドル先生に勝ちました、という試合では決して、決してないのだ*2。
さて。
苦しい日経企業のリーマン幹部が社長に「人工知能でナントカしろ!」と命令されたとする。まず、自社のビジネスとはなんなのか、どういうゲームなのかを細かく、コンピュータに理解できるぐらいまで定義できるのか?ビジネスの世界は囲碁と違って1000年ずっと同じルールだった訳ではないし、プレーヤーだって二人以上いる。外部にどれだけ論文があるかも重要だ。打ち手としてのAIが本当に最適解なのか?
なお、実際のビジネスの世界とは違い、囲碁も将棋もチェスも、ノイズのないかつ良質な棋譜、つまりコンピュータに喰わせる機械的なデータが入手しやすい形で大量に用意されているのは非常に大きかったと思う。実際のビジネスでこれらを手に入れようと思ったら相当苦労しそう。
ウチの社員は、AIを最後まで信じられるの?
本当に革新的なモノを目の当たりにして「これは素晴らしい!革新的だ!」と人間が知覚するのは非常に難しい。例えば上記の本では、グラハム・ベルが電話技術を開発した後に特許をウエスタンユニオンに10万ドルで売却しようとしたけど断られた後、その5年後に全米に電話機が普及する話が登場する。あるいは、映像が白黒かつ無音だった映画が流行っていた1927年、ワーナーブラザーズの社長は技術者の音声技術の売り込みを断っていたりする。社長がどう思っていたかは知らないが、当時は「映画は無音かつ白黒」が常識で、チャップリンが流行っていた時代だ。革新的な技術を革新的と知覚することが簡単とは限らない。
AlphaGoもそうだった。4線の石にカタツキする手は、囲碁5級の俺に向けて書かれた「初段を目指す本」とかに、明らかにダメな手として登場していた。人間が過去の経験から導いた常識なのだ。ではなぜ、プロ棋士は常識を捨てて、4線にカタツキする手を受け入れたのか?答えは簡単で、「コンピュータに負ける」というリスクを背負ってまで、投了するかヨセで地を計算するところまで、つまり最後まで戦いきって負けたからだ。これまでの常識を全部捨てて、まっさらな目でAlphaGoの手を、何人ものトップ棋士たちが必死に研究したからだ。
「初段を目指す本」に頻出するくらい、悪い手として常識だった4線の石にカタツキする手。これが、例えば最後まで打たず、30手で打ち切って次の対局に移行するルールだったらどうだろうか?30手で打ち切っていれば、プロ棋士が勝つことはないが、負けることはない。そのとき、それでもプロ棋士たちは、4線にカタツキする手を「いい手」と知覚することができるのだろうか?
現実にビジネスの世界にAiを導入したとき、AIが導出した打ち手がプログラミングが拙くてその手になったのか、それともプログラミングは完璧で、人間の常識からは考えられない革新的な打ち手を見いだしているのか。見た瞬間に「これはAIスゴいぞ!革新的だ!」と人間が知覚することは極めて難しいように思う。囲碁はルールが変化することは殆どないが、実ビジネスにおいては、AIが開発開始当初では革新的な手を打ったとしても、その手が陳腐化する可能性がある。陳腐化しにくく、変化が小さい、かつ論文数の多い分野は、自社ではどれに当たるのか?を考えた上で、「その仕事は何万通りの合法手の中から一手を見いださないといけない仕事なのか?」まで考えた方がよさそうだ。ぶっちゃけ、2通りの中から1つの手を選択すればいい世界なら、クソVBAプログラマの俺でもif文で作れるぐらいだ。それまでの仕事の生産性が低すぎるので、if文で生産性が劇的に向上する場面を、俺は何回も見てきた。
さらに言えば、実ビジネスの世界には、囲碁の世界のように変化に柔軟かつ強い人が何人も検討し続ける、ということが起こるのだろうか。非常に疑わしいように思う。幹部はめっちゃ苦労しそうだなーと思いながら、俺は知らない顔して明日もクソExcelを量産した方が幸せそうではある。
予算は?コストメリットは?
AlphaGoのサーバ料金は最低60億円!!? | ふくゆきブログ
AlphaGoは、高い。人工知能も、恐らく2017年現在では高い技術だろう。そんなスゴい投資を、自社ができるポジションにいるのだろうか?
幾何ら金が掛っても良い完全な製作の出来る一通りの機械を買入れる事に努力しました。一台五万円も六万円もする機械が相当多数に要りますが、夫は致し方ありません。其の機械を買う事を躊躇するなら始めから自動車事業に手を着けぬ方がましです。それですから機械にウンと金が掛る事を覚悟しなくてはなりません。
(中略)一つ機械を買い損えば三万や五万円はふっとんでしまいます。こう言う高級な機械を買っても其れが満足に使いこなせるであろうかと言う事が次に来る問題であります。
Excelのショートカットキーを覚えられる人、覚えられない人
以下、一般論ではなく自分の同僚や後輩たちに見られる傾向のみを書くのであって、過度に一般化する意図はない。
結論から先に言うと、ショートカットキーを覚えられる人はタッチタイプができて、ショートカットキーを覚えられない人はタッチタイプが出来ない人、だった。
私も普段パソコン仕事をしているのですが、キーボードを打つのは遅いし、特にExcelを使うのが苦手で、他の人より仕事が遅いという悩みがありました。
この文章を読んで、真っ先に、ショートカットキーよりも先にタイピングが遅い=タッチタイプできないことを改善しろよ…と思ったのは自分だけではないと信じたい。
ここでタッチタイプを割算に、Excel作業を方程式に例えてみる。
例 方程式 –3x = 12 の解き方。
この–3はxにかけてあるので逆数をかける(-1/3) * (-3x) = 12 * (-1/3)
両辺それぞれ約分して計算する
x = 4
割算を暗算で出来る人は、12 / 3 = 4をいちいち意識して計算しない。12 / 3という文字列を見れば、瞬時に4が出てくる。その間に思考プロセスはない。では、割算ができない小学生がこの方程式を解こうとすると、どうなるのか? 恐らく、鉛筆12本と大きな紙を用意して、その紙に大きいマルを3つ書き、そのマルの中に鉛筆を順番に1本1本入れて、4本ずつになるのを目視で確認しながら12 / 3を行うだろう。「割算 教え方」でググると、小学生にどうやったら割算を教えられるのか、親や先生の苦労の跡が伺える。*1
ショートカットキーやタッチタイプをやる目的と九九をやる目的は同じだ。キーボード操作を無意識化するために行う。キーボードをいちいち意識しながら打っている人間に「ショートカットキー便利だよ」と言っても、作業が早くなった実感を得られる確率は非常に低いのだ。タッチタイプ出来ない人がショートカットキーが便利であることを知覚するためには、タッチタイプ出来ない人が行うマウス操作よりもショートカットキー操作の方が早くなければならない。また、キー操作を意識していたのに加えてショートカットキーを意識しなければならないのだ。人間のワーキングメモリは有限だ。「Excelで行おうとしていたビジネスロジック+キー操作+ショートカットキー」を全部意識するのは大変だ。これがマウス操作だと、ビジネスロジック以外意識する必要はない。そういう人が「ショートカットキーは便利だ」とはなかなか知覚できないし、マウス操作の方が自分には合っている、とすら感じるだろう。
一方、タッチタイプ出来る人はキー操作を無意識に行える。連立方程式を解く際に、12 / 3 = 4を見た瞬間に、なにも考えず、全く意識することなくキー操作を行える。この人に「ショートカットキーは便利だよ」と教えると、ショートカットキーは操作を無意識化してくれるもの、と知覚できる。これが大きい。この人は最初は「ビジネスロジック+ショートカットキー操作」を意識するだろうが、やがてショートカットキーが手に馴染むと、そのExcel操作は無意識化される。結果として、「ビジネスロジック」以外意識しなくなるわけだ。12 / 3 = 4が瞬時に行えるのと同じように、直前の行と同じ値を入力するんだなーと思った瞬間に、手が勝手にCtrl + Dを押すようになる。やがて、慣れた道を行くドライバーが、いつもの交差点で全く何も考えず、無意識にウインカーを出し、ブレーキを踏み、目視確認してハンドルを切るように、Excel操作も無意識に出来ることが増えるようになるだろう。よくタッチタイプ出来ない人から誤解されるが、タッチタイプできる最大のメリットは、単にキー操作が早くなることではない。脳が意識することを減らすことに最大のメリットがある。キー操作が早くなることは、脳が無意識になった結果起こった事象にすぎない。
なお、私はショートカットキーを1日に1~2個だけ覚えて、2ヶ月で30~40個ショートカット覚えることができた。一度に何個も覚えようとすると意識することが増えて挫折したので、新しいショートカットキーを覚えるときは、以前覚えたショートカットキーを完全に無意識に打てるようになってから次のショートカットキーに進むようにした。40個ショートカットキーを覚えると、以前よりも相当早くなったと感じる。一度に全部覚える必要などないのだ。
タッチタイプを習得するためには、地道な練習しかない。小学生が百ます計算やドリルで反復練習で九九を覚えたのと同じように、正しい型を習得して、反復練習するしかないのだ。情報系の大学や専門学校、高専卒の友人や先輩・後輩に話を聞くと、大抵は1年生の一番最初に、タイピングソフトを一コマかけて延々やる授業があるそうだ。彼らはずっと情報系の授業をやるより、最初にタッチタイプをやったほうが圧倒的に学習効率が上がることを知っているのだろう。というか、12 / 3 = 4をいちいち意識しながらでないと解けない小学生に、誰も方程式を教えようとは思わない。まずは九九ができるようになってから、と思うのが筋だ。情報も同じで、まずはタッチタイプ、話はそれからだと考える。算数や数学において九九が基本であるように、PC操作はタッチタイプが全ての操作の基本だ。これが出来ないと先へ進むのが非常に難しい。
タッチタイプは習得率も非常に高い。これも先程の情報系学科卒業生に聞いたが、他の科目で赤点を取ることはあっても、タッチタイプで赤点をとった人は同級生には誰もいなかったそうだ。サンプル数が少なくて恐縮だが、私の知る限りは15歳や18歳の少年少女200人程度は、数ヵ月練習すれば全員タッチタイプを習得できたことになる。タッチタイプは頭のいい人が突然できるようになるスキルではない。誰でも一定期間の練習量は必要だが、一定期間練習すれば習得できるようになる確率が非常に高いスキルだ。野球のピッチャーで150kmストレートを投げることは、どんなに練習しても出来ない人の方が多いが、タッチタイプであれば、練習すればできるようになる人の方が圧倒的に多い。それは九九の暗算と同じだ。だからこそ、九九を学校で教えているのだ。
今の日本のホワイトカラーは、九九ができない小学生に方程式を教えようとして「なんでできないんだ」と言ったり、自分が九九ができないことすら自覚していないのに「方程式は難しい。こんなのやらなくて良い。足し算と引き算だけで十分じゃないか」と言ったりしている。これを滑稽と言わずして何というのだろうか。
*1:わり算(割り算)の教え方は水道方式でわかりやすく!など。このページを見ると、割算を瞬時にできないとはどういうことかを思い出させてくれる。間違ってもこの子達に方程式を教えたいとは思わないだろう